先日、ローラー&(悪天候)用自転車のフレームを新調しようと思い、
フレームを探していたところ、スカンジウムフレームがありました。
同僚はスカンジウムという素材のフレームと思っていたようですが、
実際にはアルミ合金にスカンジウムを添加した材料なので、基本的にはアルミフレームです。
そして大部分が7000系合金へのスカンジウムの添加と考えられます。
ただ、そうはいってもスカンジウムの添加によってどんな効果があるのかわからない人も多いと思うので、「軽金属第49巻第3号128-144」に記載の内容を自転車フレーム用途としてのメリットをざっくり説明させていただきます。
そもそもスカンジウムってなに?
スカンジウムは原子番号21のレアースメタルの一種です。
レアースメタルの宝庫であるスカンジナビア半島からそう名付けられたようです。
始めて製造されたのが1956年と比較的新しい金属となっています。
利用としては以前からアルミニウムへの添加により強度が向上することがわかっており、旧ソ連軍の戦闘機の材料にも使用されていたとのことです。
近年、燃料電池の電極材料として注目されており採掘量も増えたことから、価格は下がってきているらしいのですが、それでも1kg200万円の高価な材料となっています。
ですので後述の効果があったとしてもホイホイ添加できないのかと。
自転車材料としてのスカンジウム添加のメリット
そんな高価なスカンジウムですがアルミ合金に添加した場合、自転車材料として多くのメリットがあります。
強度が向上
スカンジウムを添加することで、材料強度が向上します。
強化機構としては3つ。
①時効硬化の加算
②再結晶の抑制
③強化相の核生成の促進および粗大化の抑制
があります。ただ、この3つの説明にはものすごく時間がかかるので、ざっくり「強度が上がる」ということに留めておけばいいと思います(笑)
強度が上がれば材料を薄くできるので軽いフレームを造ることができます。
加工性が向上
スカンジウムを添加することで鋳造後の結晶粒が小さくなり、押し出し性が向上します。
自転車材料として考えた場合メリットになりそうになりですが、先述の「材料を薄くできる」に関わってきます。
押し出し性が良好なら薄肉のパイプを押し出しやすいということです。
また加工後の硬度が下がらないという効果もあります。
溶接性が向上
スカンジウムを添加することで溶接割れを抑制できます。
溶接割れはほとんど粒界割れとなっているので、凝固時に結晶粒微細化効果のあるSc添加は溶接割れを低減出来ます。
なんのこっちゃわからないかと思いますが、要は溶接部の結晶が緻密になって割れにくくなると思ってくれれば大丈夫です。
基本的にはアルミフレームは各パイプを溶接して作りますし、鉄と比べて難溶接材であるアルミの場合溶接性の向上は結構なメリットとなるはずです。(軽量にしようとすると薄肉となっているはずですし)
結局どうなの?
こうやって記載するとアルミ合金へのスカンジウムの添加は自転車用途としてはピッタリ過ぎて驚きです(笑)
乗り味はフレーム設計によるところが大きいと思うので何とも言えませんが、基本的なスカンジウム添加の効果はフレームを軽量に出来るで良いはずです。
実際、めちゃくちゃ軽量です。
ただ、溶接性の向上等により、フレーム設計の自由度が増えて剛性も高いけど乗り心地も良いといったフレームが作りやすくなっているのかもしれません。
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